【調査資料】王のいない王国について
調査記録: No.23
世界番号: JU.21
概要:
JU.21は、日記が存在しない。
よって、ある王国の構築時の記録と背景
定期観測終了時のやり取りをエビデンスとして記録し、終了とする。
その王国に、王は存在しなかった。
その王国に、男は存在しなかった。
そんな王国に、夢は存在しなかった。
永遠の命という呪い
永遠に自由という呪い
永遠に人を愛せないという呪い
王がいないその王国には、生きている理由が存在しなかった。
王がいないその王国には、幸福という概念が存在しなかった。
そんな王国に、とある神が微笑んだ。
【君たちに王を授けよう。今夜君たちは夢を見る。
夢に現れる王を心から愛したとき、君たちは幸福を知る。】
夢に現れた王は、まさに夢の王だった。
皆を愛し
皆に愛され
国を愛し
国に愛され
王のためならすべてを捧げる。
王のためなら永遠も祝福となる。
彼の幸福は、国と皆の幸せである。
【君たちの想いを受け入れよう。王のいる王国に幸あれ。】
ある少年は孤独だった。
ある少年は不自由だった。
ある少年は誰からも求められなかった。
親という存在には、すべてを制限され
学校という存在には、すべてを強制され
世界という存在には、結局自由はなかった。
そんな男に、神が微笑んだ。
【君を求める子達がいる。
その子たちは君を制限しない
その子たちは君を強制しない
その子たちは君に自由を与える。
君は世界に愛され、世界を愛する存在となる権利を持つ。
君は夢を見る。
ある国の王になる夢
民から愛され、民を愛する王になる夢
国から愛され、国を会うする王になる夢
君は王になる。
君は今の人生を捨てて、新たなる人生を得る。
選べ。少年】
その日、少年は夢を見た。
玉座に腰かける王
王が愛し、王を愛する民に囲まれる情景
少年は、世界から、民から国からすべてから求められ
少年の感じる幸福は、民の幸福であるという実感
少年は、王になる道を選んだ。
【君の想いを受け入れよう。王よ。君の王国に幸あれ。】
JU.21 構築完了
日記出現までの間、定期観測開始
Engel.237からの報告
観測より、1年と3か月経過
日記出現の兆候なしと判断
定期観測は引き続き継続とする。
Arvelからの回答
世界は整っている。
定期観測を終了し、JU.278の構築を優先
Engel.237の回答
了解